深大寺そば(東京都調布市深大寺元町5丁目)
関東地方ではしばしば耳にする深大寺そばですが、その由来には諸説あるようです。水はけの良い土地が蕎麦栽培に適していたこと、良質の湧き水がそば打ちの好条件であったことが起源であり、天台宗総本山の貫主に献上され大変ご称讃されて以降、諸大名などにも評判が広がり、寺の名産として深大寺そばと呼ばれるようになったとも云われています。
深大寺へは最寄りの駅からバスで向かいます。深大寺入口の交差点から東に向かうと、周囲の住宅街とは画された緑豊かな地域に入ってゆきます。

山門までの参道には土産物屋さんや茶店のほか、蕎麦屋さんが何件も並んでいます。正面の山門は深大寺で最も古い建物で、元禄8年(1695年)に建てられました。

深大寺の開創は奈良時代、天平年間とも伝えられていますが、今から約350年前、江戸時代初期の生保3年(1646年)に火災に遭って大半の建造物が消失しました。深大寺そばが名産品になったのはそれ以降の元禄年間のことになります。

蕎麦は寺の農地で作られていましたが、その農地は譲渡され、昭和36年(1961年)に神代植物公園が開園しました。深大寺への参拝客に加え植物公園への訪問客も増え、そば屋さんも増えたそうです。前述の参道界隈にも老舗の嶋田家さん始め多くのお店が軒を並べますが、深大寺通りと呼ばれるバス通り沿いにも10軒あります。今回は九割蕎麦が評判の「湧水」さんを訪れました。

九割のもりそばを大盛で注文しました。色合いは茶色ではなく、少し緑かかっているようです。一口目はつゆに漬けずに少し頂きます。そばの香りで云われる土の香りを少し感じつつ、とても爽やかなそばだと思いました。つゆは辛めのしっかりしたもので、江戸っ子ではありませんが、自ずと少しだけつけて丁度良い味です。短めに作ってあるようで、多分切りつつ最後になった端っこの部分と思われる部分も少し幅広のまま入れて頂いていて、蕎麦粉を大切にされているのだと想像しながら頂きました。(こんなに美味しいものを一片でも捨てるのは勿体ないですものね。)
