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建物の寿命から地域の経済を考える

ニュース番組の冒頭などで、東京都心の遠景が映し出されることがあります。方角的に新宿の超高層ビル群に目を向けることが多いように思いますが、新橋、渋谷、池袋などにも高層ビルが立ち並び、見る位置により各々の街が遠くからでも分かります。またビル群といえば、丸の内オフィス街を歩くと、高層という印象よりも日本の経済の中心である重厚さを感じます。丸の内といえば、2028年度に、柱や床に国産木材を多く使った、高さ100メートルのビルが建設されるとのことです。地方都市では人口減少や大型ショッピングセンターの進出により、かつては繁華街として栄えた地区が、シャッター商店街になってしまったとの話題も耳にし始めて久しくなりました。一方で、東京都内に目を向けると、昨年の11月24日、森ビルが開発を進めてきた麻布台ヒルズがオープンし、日本一の高さや高層ビル周囲に設けられた趣向を凝らした意匠が話題になっています。また、何気ない商業地区や住宅地でも、常に何処かで低層の鉄筋造りの建物や木造住宅が取壊され、新しく立て直す工事が進められています。今回は、今のところ日常的に殆ど見ることがない、高層ビルや重厚なビル群の寿命が来た時の状況に思いを寄せてみました。

私の個人的な思いとして、1990年(平成2年)12月に完成した新宿の東京都庁舎は、昭和時代に計画、設計されたものであるものの、平成時代を代表する建造物の一つだと考えています。その理由は、その規模と意匠が都政の責任の重さを象徴するよう感じさせることだと思います。外観が石造り、ゴシック風で、威厳があり頑丈そうにも見えます。しかし、構造としては鉄骨、鉄筋コンクリート、あるいはそれらの組合せになっており、他の高層ビルと違いはないようです。それでは、これら高層ビルの耐用年数は?という疑問に対する回答ですが、インターネットで検索すると多くの回答を得ることができます。まとめると、躯体構造としては100年、200年は大丈夫だが、長周期地震への対策には課題がある。構造的な寿命よりも時代により建物への需要の変化があり、維持費も相当掛かるため、建物の寿命に関わらず建替えになる場合もあるとのことです。

奈良の東大寺金堂(大仏殿)は、世界最大の木造建造物として、1300年間も維持されています。聖武天皇、光明皇后の平和を願う思いと、多くの人々による大仏さまへの信仰が、前述の「需要」にあてはまるのだと思われます。また、1000年以上も前に日本の大工により培われてきていた高い技術に裏付けられた木造建築の寿命が、前述の近代的な技術と材料による高層建築の寿命を遥かに超えていることについて、改めて感慨を深くしました。因みに、加古里子(かこさとし)さん作の絵本である「ならの大仏さま」によると、前例のない大きな仏像と建物を造ることになり、「造東大寺司(ぞうとうだいじし)」という役所が作られ、建物に関しては、石材を切りだし加工する「石山所」、材木をやまから伐りだす「山作所」、材木を細工し、建物や用具を作る「木工所」、粘土を焼き瓦を造る「造瓦所」などの部署が分担、各々で責任者や多くの技術者、工人、作業者により偉大な工事が進められたとのことです。現代になって建造された建物の中に、1000年先にも稼働、維持され続けるものは殆ど存在しないであろうことを思うと、改めてその貴重さ、尊厳さを感じざるを得ません。

大企業、中小企業が頑張り、経済を回して生活を豊かにする、諸外国とおつきあいする中においても、立派な都市づくりは大切なことだと思います。一方で、地域の産業が頑張り、地域の経済を回す、地方都市では取り壊して立て直すことを主たる方法とせず、できる限り改築、改修しつつ、大都市とは違った価値観を創造することを考えてみる手もあるのではないでしょうか。価値観を現代の目先の内容とはせず、50年先、100年先の未来を想像した内容にすることで、気持ちの豊かさといった精神論だけでなく、経済の観点からも、大きな価値創造に繋げることができるような気がしてきました。

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